日本語では「氣が切れる」という言葉があります。文字通り「氣」が切れる、もしくは「氣」を切るということです。
心身統一合氣道会の会員に、世界的な登山家がいらっしゃいます。
登山において、最も氣が切れやすいのは山頂に達した時だそうで、そこで氣を切ることで、下山の際に事故が発生しやすくなります。無事に帰るところまでが登山であり、そこまで絶対に氣を切らない、もっと言えば、登山の後も氣を切らないことが重要なのだそうです。
これは日常生活やビジネスでも同じことです。我々はどの様な状況・タイミングで氣を切りやすいのでしょうか。
休みが終わって仕事や学校に戻る時などは、氣を切りやすいですね。休みをどう過ごすかにしか心を使っていないと、休みで氣が切れて、日常生活に戻るのに大変なエネルギーを必要とします。そうは言っても、「氣を切らないように」と、ずっと会社や学校の事を考えていたら、休んでいる氣にはなれませんね。
ポイントは、休み明けに会社や学校に戻った際に最初にすべき事を、つまり戻り口まで確認しておいて、あとは忘れることです。それだけで氣が切れなくなるので、休みを取りリフレッシュしても会社や学校に戻るのが大変でなくなります。
少し先まで心を使い、氣を切らないことが大事です。
登山と同じく、大きな目標を達成した後も、氣が切れる瞬間です。志望していた大学に合格し、大学生として新生活が始まったのに、その後に明確な目標がないと、そこで氣が切れてしまうわけです。月入学の場合、ちょうど今の時期(5月頃)かもしれませんね。
氣が切れてしまうと、そこで燃え尽きて、やる氣は減退します。今年はオリンピックの年ですが、オリンピックで金メダルを取り、燃え尽きてしまう選手がいるのも同じ理由です。
そうならない、そうさせない為には、氣が切れることがない様に、正しい目標設定をして、先のことまで心を使う必要があります。特に指導的立場にある人は、相手の氣が切れることがない様に相手を導くことが重要です。
リーダーであれば、大きな成功を収めた後、目標を達成した後、大きなイベントを終えた後などで、メンバーの氣が切れない様に、上手に導くことが求められます。
藤平光一宗主はそれを戦地で経験しました。
戦地で日本の敗戦の知らせを受けた際、部隊は大変な衝撃を受け、やけになる隊員も多かったそうです。戦争は終わっても、戦地で戦闘がなくなったわけではないので、こういう時こそ、氣を切らないことが大事だと考えたそうです。
その晩から、夜の見回りは中隊長である自分自身で行いました。みな、敗戦の知らせで、見回りに氣が入らなかったからです。数日経って心が落ち着いて来ると、「隊長、私達がやります」と、氣が切れていたことに氣づいた隊員が声をかけてきたそうです。
最も氣が切れやすい瞬間が、最も危険で瞬間であったわけです。
終戦後、実家に戻った際も、氣を切らない様に用心したそうです。
日々、命が危険にさらされている戦地から、安全な環境に戻れば、無意識に内に氣が切れてしまうことを体験的に分かっていたので、戻ったその日から、実家で農作業を始めたそうです。
両親からは、「せっかく戦地から無事に戻って来たのだから、少しはゆっくりしたらどうだ」と言われたものの、それから数週間、休まず農作業を続けたそうです。
極限状態から解放された瞬間に氣が切れてしまうことで、身体に表れる影響は本当に大きかったことでしょう。中には、戦地から無事に戻って来た直後、原因不明の衰弱により、不幸にも亡くなった方がいたそうです。
無意識のうちに、氣が切れることが最も恐いことです。自分自身で氣が切れやすい状況、タイミングをよく観察した上で、その都度、先のことに心を使っていくことが重要なのです。
氣を切らない訓練をして参りましょう。